彦成小学校講堂記念館のあゆみ

更新日:2023年06月30日

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彦成小学校講堂記念館のあゆみ

 彦成小学校講堂記念館は、彦成小学校敷地内にある郷土資料館分館で、彦成小学校の講堂として建てられた建物を利用しています。

 建物は大正15年(1926年)3月30日に建てられました。平成28年(2016年)3月10日に、大正時代の貴重な木造建築物であり、修繕などを経て当初の姿が復原されていること、また長年市民に親しまれてきた建物であることから、三郷市指定文化財(建造物)に指定されました。

彦成小学校講堂記念館の歴史

近代教育の黎明(れいめい)

 明治5年(1872年)、国民すべてが教育を受け、教育の力で国を豊かにするため、学制が公布されました。学制の公布により市域にも、明治6年(1873年)、至誠(しせい)・有成(ゆうせい)・弘明(こうめい)・開智(かいち)・秉彝(へいい)・文靖(ぶんせい)・浩養(こうよう)・培植(ばいしょく)の8つの私立小学校が創設されました。このうち、文靖・浩養・培植の3校が、彦成小学校の前身にあたります。

 明治21年(1888年)、市制・町村制が公布されたことにより、市域は早稲田・八木郷・戸ヶ崎・彦成の4つの村に編成されました。小学校令により、市町村は児童数に見合う学校を設置することが義務付けられ、学制期に作られた学校をもとに、明治22~24年(1888年~1890年)、早稲田小学校・八木郷小学校・戸ヶ崎小学校・彦成小学校の前身にあたる4校が開校しました。

 彦成地区には明治24年(1891年)、彦沢尋常小学校が開校しました。明治26年(1893年)には高等科を設置し、彦成尋常高等小学校と称しました。明治39年(1906年)、本校を彦倉、分教場を花和田、彦成におくと定め、明治41年(1908年)に彦倉に新しい小学校校舎が建てられました。

木造校舎の左側に建つ講堂を黒い丸で囲んで示している彦成小学校全体を上空から撮影した写真

木造校舎の頃の彦成小学校 昭和44年(1969年)

赤い下向き矢印
鉄筋コンクリート造りの校舎の斜め左側に建つ講堂を黒丸で示している彦成小学校全体を上空から撮影した白黒写真

木造から鉄筋コンクリートに 昭和45年(1970年)

彦成小学校講堂記念館の誕生

 講堂は大正15年(1926年)3月30日に建てられました。小学校の入学式、卒業式、祝日の祭典、学芸会などの学校行事や、成人式などの村・町の行事に利用されました。
 生徒たちは普段、講堂には掃除以外で入ることはできませんでした。出入りの際は渡り廊下で校舎とつながっている南側出入口を利用しており、それは保護者も同様でした(南側出入口は、現在は改修されトイレが増設されています)。
 西側に面した出入口(現在使っている出入口)は通常使用されませんでした。
 講堂は学校教育の場としてだけでなく、球技大会や民謡発表大会など、住民の生涯学習や成果発表の場としても利用されていました。その様子は広報みさとや写真に記録が残されています。

講堂 昭和63年(1988年)

中央に1本の木が立つ左側に南側出入口を黒い丸で囲んで示している1階建ての講堂の建物外観の写真
周囲に細い木が立つ左側に西側出入口と書かれた講堂の写真

講堂棟札(こうどうむなふだ) 大正15年(1926年)

 講堂が大正15年(1926年)に建てられたことを裏付ける資料です。
 棟札を見ると講堂の建築にあたって建築委員会が設置されたことや、建築に携わった棟梁(とうりょう)・鳶(とび)の名前が分かります。棟札に書かれた建築委員会の会員から、講堂を建てることが村をあげての一大行事であったことがうかがえます。

中央に鎮守大國主神と書かれ他4柱の神様が書かれている講堂棟札の表の写真
上に上棟と書かれ建築に携わった棟梁や鳶の名前が記されている講堂棟札の裏の写真
棟札とは

 建物の由緒や建築年月日、施主(せしゅ)や職人の名前や祈願文を記した札で、建物を建てる際に作られます。

 棟木に打ち付けられたり、屋根裏に納められます。

棟梁と鳶について
棟梁 田口文吉(とうりょう たぐちぶんきち)

 大正から昭和時代に活躍した花和田生まれのかたで、「田口大工」といわれていました。 
 彦成村周辺で活動し、彦成小学校校舎など地域の木造建築を手がけました。

鳶工 平井新蔵(とびこう ひらいしんぞう)

 番匠免で幅広く活動したかたと伝えられています。

郷土資料館としての利用

 講堂は平成4年(1992年)5月、市内にあった仮郷土資料館(開館:昭和53年(1978年、場所:茂田井地区)の閉館に伴い、新たな郷土資料館として利用されることになりました。
 この際、講堂は郷土資料館として利用しやすいように改修されました。内部改装と設備拡充・塗装工事が行われ、講堂奥部分は収蔵室となり、今まで様々な行事で村民・町民・市民が踏んだ舞台は、人々の目の前から消えました。
 郷土資料館となった講堂では、農具や農家の暮らしに関わる資料など、地域の歴史について展示していました。

建物入り口前に花を咲かせた桜の木が立っている薄緑色の壁で1階建ての講堂の建物外観の写真

郷土資料館として開館した講堂 平成4年(1992年)

三郷市立郷土資料館見学のしおりリーフレット

開館当時の「見学のしおり」

展示のようす

荷車やテレビ、タンスなど当時使用していた道具などが展示されている資料館内の写真
ホールに展示されている米俵を乗せた荷車をアップで撮影した写真

彦成小学校講堂記念館として文化財に指定

 平成26年(2014年)、新たな郷土資料館(現在のわくわくライブラリー、場所:谷口地区)が新設されたことに伴い、郷土資料館として利用されていた講堂は彦成小学校講堂記念館と名を改め、郷土資料館分館となりました。あわせて内部を仕切っていた壁などを撤去し、講堂の本来の姿に復原し、往時をしのばせる舞台も人々の前に再び姿を現しました。
 平成28年(2016年)、彦成小学校講堂記念館は市内でも有数の近代建築であること、地域のかたに長年慣れ親しまれてきた建物であることから、三郷市の指定有形文化財(建造物)に指定されました。

敷地の左側と右手前に花を咲かせた桜の木が立つベージュ色の壁で1階建ての彦成小学校講堂記念館の建物外観の写真

現在の彦成小学校講堂記念館 令和3年(2021年)

ここに注目!近代の息吹を感じるポイント

天井の装飾

透かし彫り

 彦成小学校講堂記念館の内部は、講堂機能と体育施設を兼用するための実用的な建物なので、ほとんど装飾はありませんが、唯一天井に蝶(ちょう)・菖蒲(しょうぶ)・鳳凰(ほうおう)の透(す)かし彫(ぼ)りが二か所ほどこされています。このうち一か所には建築当時のものと思われるペンダントライトも残っており、古風な趣を感じさせます。

天井の装飾(上:西側、下:東側)
「古風な趣を感じさせるペンライト」鳳凰・蝶・菖蒲の透かし彫りが施された天井の中央にペンダントライトが吊るされている写真
「ペンダントライトまわりを飾る二羽の鳳凰と四方を舞う蝶、菖蒲」中央丸枠内に2羽の鳳凰、四方に4羽の蝶、枠外に4つの菖蒲の花の透かし彫りが施された天井の写真

折上げ

 壁と天井の境目はカーブを描く造りになっています。これはお寺やお城の天井に用いられる天井を高く豪華に見せる「折上(おりあ)げ」という手法で、講堂にふさわしい格式を与えています。

奥の檀上に立っている男性の話を参加者が座って聞いている後ろ姿の会場のカーブを描いた折上げ造りとなっている天井が黒線で記されている白黒写真

彦成婦人学級(天井には「折上げ」の手法が確認できる)

建物の外観

装飾窓

 両開きの鎧戸風(よろいどふう)に造られた装飾窓が、切妻屋根(きりづまやね)(山型の屋根のこと)の妻面(つまめん)(三角形になっている部分のこと)両側につけられています。内部から窓を開ける蝶番などはなく、実際に開けることはできません。これは妻面の装飾としてよく用いられる形式です。

両開き鎧戸風の装飾窓(左:西側、右:東側)
建物の入り口の屋根下に施されている両開きの装飾窓が赤丸で記されている彦成小学校講堂記念館の建物外観の写真
傍に大きな木が立つ彦成小学校講堂記念館の屋根下に施されている両開きの装飾窓が赤丸で記されている写真

玄関ポーチ

 玄関ポーチを支える二本の柱は建物の外観の中でも特に装飾的に造られています。柱は四本の角柱が半円形の柱を挟むような形に組まれています。半円形の柱材には西洋建築に見られる筋彫(すじぼ)りという装飾がほどこされています。

玄関ポーチに設置された4本の柱に筋彫りの装飾が施されている彦成小学校講堂記念館入り口の写真

彦成小学校講堂記念館玄関 平成24年(2012年)(玄関部分修繕後)

講堂旧柱 大正15年(1926年)~平成24年(2012年)

 平成24年(2012年)、玄関ポーチ柱の傷みが激しかったため、付け替えられました。その時に切り出された柱は、現在も彦成小学校講堂記念館で保存されており、柱の造りが観察できます。

 現在玄関ポーチを支える柱も、旧柱と同じ造りになっています。

玄関ポーチ柱の上部が痛み木材が剥がれている修繕前の柱をアップで撮影した写真

彦成小学校講堂記念館玄関
 平成23年(2011年)
(玄関部分修繕前)

四方に4本の角材、間に半円形の木材を組み立てた、切り出された玄関ポーチ柱を上から撮影した写真

切り出された柱を組み立てて上からみたところ

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